PSEマーク付きモバイルバッテリーの選び方と安全性について

発火・爆発事故の増加

2010年代に入り、スマートフォンの普及とともにモバイルバッテリーの需要が急増しました。

しかし、同時に発火や爆発事故も増加の一途をたどりました。

2017年には、東京都内の電車内でモバイルバッテリーが発火する事故が発生し、乗客に軽傷を負わせる事態となりました。

また、家庭内での充電中の発火事故も相次ぎ、消費者保護の観点から規制強化が求められるようになりました。

これらの事故の多くは、安全基準を満たさない粗悪品や、適切な保護機能を持たない製品が原因でした。

特に、リチウムイオンバッテリーは、適切に管理されないと発火や爆発の危険性があるため、厳格な安全基準が必要でした。

規制の詳細

2018年2月、経済産業省は電気用品安全法の改正を発表し、モバイルバッテリーを規制対象に追加しました。

この改正により、2019年2月からPSEマークのないモバイルバッテリーの販売が禁止されました。

規制対象となるのは、以下の条件を満たすモバイルバッテリーです。

• リチウムイオンバッテリーを使用している：
  リチウムイオンバッテリーは高エネルギー密度で軽量という利点がありますが、適切に管理されないと発火や爆発の危険性があります。そのため、安全基準の適用が特に重要です。
• 携帯電話やスマートフォンなどの充電に使用される:
  スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの充電を目的とした製品が対象となります。業務用や産業用の特殊な用途のバッテリーは対象外となる場合があります。
• 日本国内で販売される:
  本国内で販売されるすべてのモバイルバッテリーが対象となります。個人輸入や海外からの直接購入も、日本国内で使用する場合は規制の対象となります。

この規制により、メーカーや輸入業者は、製品を販売する前にPSEマークの取得が義務付けられました。

また、小売店やオンラインショップも、PSEマークのない製品を販売することができなくなりました。

丸形PSEマーク

モバイルバッテリーは「特定電気用品以外の電気用品」として分類され、丸形PSEマークが必要です。

丸形PSEマークは、比較的リスクが低い電気用品に適用されるマークです。

丸形PSEマークの特徴：

• 円形のデザイン:
  丸形PSEマークは円形で統一されており、消費者が一目で識別できるようになっています。このデザインは国際的な安全マークの基準に準拠しています。
• 中央に「PSE」の文字:
  マークの中央には「PSE」の文字が配置されており、これは「Product Safety Electrical Appliance & Material」の略称です。この文字は明確で読みやすいフォントで印刷されています。
• 黒色で印刷される:
  標準的な丸形PSEマークは黒色で印刷され、視認性を高めています。ただし、製品の色やデザインによっては、白色や他の色で印刷される場合もあります。
• 製品本体やパッケージに表示される:
  PSEマークは製品本体とパッケージの両方に表示されることが義務付けられています。これにより、購入時と使用時の両方でマークを確認できます。

このマークが付いている製品は、一般的には技術基準に適合していることを証明する第三者機関の認証を受けています。

ただし、法的には「自主検査」であり、第三者機関の認証（証明書）は必須ではありません。

自社で十分な設備や知識があれば自社検査も可能です。

ひし形PSEマークとの違い

ひし形PSEマークは、リスクが高い特定電気用品に付与されるマークです。

特定電気用品には、以下のような製品が含まれます

• 電熱器具（電気ストーブ、電気毛布など）: 発熱を伴う電気製品は火災のリスクが高い。
• 電動工具: 高電圧・大電流を扱うため、感電や火災のリスクが高くなります。
• 医療機器: 人体に直接影響を与える医療機器は、故障や誤動作が人命に関わる可能性があります。
• その他、特に安全性が重要視される製品: 産業用機器や、公共の場で使用される機器など、事故が発生した場合の影響が大きい製品。

法律違反と罰則

PSEマークのないモバイルバッテリーを販売することは、電気用品安全法違反となります。

違反した場合、以下の罰則が科される可能性があります。

特に注意が必要なのは、オンラインショップやオークションサイトでの販売です。
これらのプラットフォームでも、PSEマークのない製品の販売は禁止されています。

直接的な法律上の罰則は設けられてないですが、基本は避けた方が良いです。

事故リスク

PSEマークのないモバイルバッテリーは、安全基準を満たしていないため、以下のような事故リスクが高くなります。

主な事故の種類:

• 発火事故: 保護機能が不十分な製品では、このリスクが高くなります。
• 爆発事故: 内部のガスが蓄積されて爆発する事故です。
• 感電事故: PSEマークのない製品は、電気的な安全性が保証されていないため、充電中や使用中に感電するリスクがあります。
• 火災事故: モバイルバッテリーの発火は、周囲の可燃物に引火して火災に発展する可能性があります。

事故の原因:

• 適切な保護機能が搭載されていない:
  PSEマークのない製品は、過充電防止や過放電防止などの重要な保護機能が搭載されていない場合があります。
• 使用材料の品質が低い:
  安価な材料を使用することで、絶縁性能や耐熱性能が不十分な製品が作られることがあります。
• 製造工程での品質管理が不十分:
  製造段階での品質管理が不十分だと、電子回路の組み立てやバッテリーセルの接続部分での不備が事故の原因となることがあります。
• 設計上の欠陥:
  基本的な設計段階で熱設計や電気設計などの安全性が考慮されていない製品もあります。

これらの事故は、使用者の生命や身体に危害を及ぼす可能性があり、周囲の人や物にも被害を及ぼす可能性があります。

容量別の選び方:

20,000mAh以上:
長時間の外出や複数デバイスの充電に適している大容量タイプです。キャンプや旅行など、数日間の外出時に重宝します。複数のスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどを充電できるため、家族旅行やグループでの外出時に便利です。ただし、重量が重く、飛行機への持ち込み制限に注意が必要です。

例）充電器ではAppleとも相性がいいBelkin製

用途別の考慮点:

• 持ち運びやすさ:
  重量やサイズを考慮して選ぶことが重要です。通勤や日常的な外出では、軽量でコンパクトな製品が便利です。バッグに入れても邪魔にならず、長時間持ち歩いても疲れにくい製品を選びましょう。特に女性や高齢者の方は、重量を重視して選ぶことをおすすめします。
• 急速充電対応:
  最新のスマートフォンに対応した急速充電機能があるかを確認しましょう。USB Power Delivery（PD）やQuick Chargeなどの急速充電規格に対応していると、短時間で効率的に充電できます。ただし、急速充電はバッテリーに負荷がかかるため、長時間の使用には注意が必要です。
• 飛行機持ち込み:
  100Wh以下の容量であれば機内持ち込み可能ですが、容量表記の確認が必要です。国際線では100Wh以下、国内線では160Wh以下が一般的な制限となっています。旅行時に使用する予定がある場合は、事前に航空会社の規定を確認し、適切な容量の製品を選びましょう。

正しい使い方

PSEマーク付きのモバイルバッテリーでも、正しく使用しないと事故の原因となる可能性があります。以下の点に注意して使用しましょう。

使用環境の注意点:

• 温度管理:
  高温環境（40℃以上）や低温環境（0℃以下）での使用を避けることが重要です。特に、夏場の車内や冬場の屋外での使用には注意が必要です。
• 湿度管理:
  浴室や洗面所など、水気の多い場所での使用は避けましょう。また、雨や汗で濡れた手での操作も避けることが重要です。
• 衝撃防止:
  強い衝撃を与えない、落下させないように注意しましょう。衝撃により内部のバッテリーセルが破損し、発火や爆発の原因となることがあります。
• 通気性:
  使用中は通気性の良い場所に置くことで、発熱を防ぐことができます。バッグの中や枕の下など、熱がこもりやすい場所での使用は避けましょう。

充電時の注意点:

• 専用充電器の使用:
  メーカー指定の充電器を使用する。特に、急速充電対応の充電器を使用する場合は、製品の仕様を確認することが重要です。
• 過充電の防止:
  満充電になったら、できるだけ早く充電を停止しましょう。
• 充電中の監視:
  充電中は定期的に状態を確認することで、異常を早期に発見できます。
• 異常時の対応:
  発熱や異臭、膨らみがある場合は使用を中止し、安全な場所に移動させることが重要です。

異常の早期発見:

• 外観の変化:
  膨らみや変形がないか定期的に確認することで、バッテリーの劣化や内部の異常を早期に発見できます。膨らみが見られた場合は、すぐに使用を中止しましょう。
• 温度の確認:
  通常の使用時よりも明らかに熱い場合は、内部で異常が発生している可能性があります。すぐに使用を停止することが重要です。
• 臭いの確認:
  リチウムイオンバッテリーが劣化すると、独特の臭いが発生することがあります。臭いを感じた場合は、すぐに使用を中止し、安全な場所に移動させましょう。
• 動作の確認:
  充電時間が異常に長くなったり、使用時間が短くなったりした場合は、バッテリーの劣化が進んでいる可能性があります。

定期的な買い替え

モバイルバッテリーは使用年数が経過すると劣化し、事故リスクが高まります。

以下の目安で買い替えを検討しましょう。

買い替えの目安:

• 使用年数:
  2-3年を目安に買い替えを検討
• 容量の低下:
  初期容量の70%以下になった場合は、買い替えを検討しましょう。
• 充電時間の延長:
  充電充電時間はほぼ一定ですが、劣化が進むと充電効率が低下し、充電時間が長くなります。
• 発熱の増加:
  使用時に異常に熱くなる場合は、内部の抵抗が増加している可能性があります。これは、バッテリーの劣化を示す重要なサインです。

選び方の基本原則

• PSEマークの有無を必ず確認
• 信頼できるメーカー・販売店から購入
• 安全機能や容量、用途に合った製品を選ぶ
• 正しい使い方と定期的な買い替えを心がける