暖房の設定温度は、まず「室温20℃」を目安に決めるのがおすすめです。環境省が呼びかけている20℃はエアコンの設定温度ではなく部屋の温度(室温)のことなので、温度計で室温を確かめながら設定温度を調整し、寒い日でも室温が18℃を下回らないようにしましょう。
この記事では、環境省・資源エネルギー庁・WHO(世界保健機関)などの公的な情報と、ダイキン・パナソニック・三菱電機・日立の公式情報をもとに、暖房の適温、設定温度と室温がずれる理由、何度から・いつからつけるかの考え方、寝るときの設定温度、湿度との関係、設定温度を1℃下げたときの省エネ効果をまとめました。
暖房の設定温度は何度がいい?目安は「室温20℃」
暖房の設定温度の目安は?環境省の「20℃」は室温のこと

暖房の温度の目安としてよく知られる「20℃」は、エアコンの設定温度ではなく、暖房しているときの室温の目安です。
環境省は、冬の地球温暖化対策として、暖房時の室温を20℃(目安)で快適に過ごす「ウォームビズ」を呼びかけています。数値はあくまで「室温」で示されており、エアコンのリモコンを20℃にすれば部屋が20℃になる、という意味ではありません。
メーカーの説明も同じで、日立は「暖房の設定温度の目安は何℃ですか?」という質問に「暖房時の省エネ推奨温度(適温)は、室温20℃」と答えています。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトも「冬の暖房時の室温は20℃を目安に」としています。なお環境省は、断熱性の高い住まいで暖房しなくても室温が20℃を超える場合に、冷房してまで20℃にすることを求めるものではなく、暖房をつけずに済むならそれが最も望ましいとも説明しています。
まずはエアコンを20℃前後に設定し、人がいる場所の温度計で室温が20℃くらいになっているかを確かめる、という順番で考えると迷いません。
暖房の適温は18〜22℃が目安。健康面では室温18℃以上を保つ
暖房の適温には個人差がありますが、目安は室温18〜22℃で、健康のためには少なくとも18℃を下回らないようにしたいところです。
20℃は省エネを考えた目安でもあるため、着るものや体質によっては寒く感じることがあり、反対に寒すぎる室温は健康に影響するからです。
パナソニックの情報サイト「UP LIFE」では、家電の専門家が「環境省の20℃は節電も考慮されて少し低め」「一般的に冬の快適な温度は18℃〜22℃と言われ、多くの人は22℃くらいが快適に感じられる」と説明しています。ダイキンの「空気の学校」も、20℃を目安に着るもので工夫し、着るもので調節しにくいときは設定温度を22℃まで上げると心地いい状態になる(湿度50%・室内に風がない場合)としています。
健康面の下限としては、WHOの「住宅と健康に関するガイドライン」(2018年)が、温帯やそれより寒い地域の国では、寒い季節に一般の人の健康を守る室温として18℃を示し、強く推奨しています。同ガイドラインでは、高齢者や子ども、持病のある人など寒さの影響を受けやすい人には、これより高い室温が必要な場合があるともしています。
「室温20℃を基本に、寒ければ22℃くらいまで、どんなに節約したいときでも18℃は下回らない」と覚えておくと、省エネと健康のバランスがとりやすくなります。
暖房の設定温度の平均は?22〜25℃に設定する人が多い
実際の暖房の設定温度は、20℃より高めの22〜25℃にしている人が多いようです。
エアコンの設定温度どおりに室温が上がるとは限らないため、室温20℃を目指すと設定温度はそれより高くなりやすいからです(理由は後ほど説明します)。
パナソニックがエアコン「エオリア」の利用データを分析した結果(2022年度 同社調べ)によると、暖房利用者の平均の設定温度は22〜25℃がもっとも多く、同じ期間の平均の室内温度は22℃でした。同社はこの結果から、設定温度・室温ともに環境省の目安より高めだとしています。
ほかの人の平均に合わせる必要はありません。大事なのは設定温度の数字ではなく、自分の部屋の室温が何℃になっているかです。
暖房の温度25℃・26℃設定は高い?室温で判断する
設定温度が25℃や26℃でも、それだけで「高すぎる」とは言い切れません。室温計を見て、室温が22℃を大きく超えているなら設定温度を下げましょう。
同じ25℃設定でも、断熱性の低い部屋や窓の多い部屋では室温が20℃前後にとどまることがあり、反対に暖まりやすい部屋では室温が25℃近くまで上がることもあるからです。
「温度を高くしたほうが暖かい」のは確かですが、室温が上がりすぎると、パナソニックのUP LIFEが挙げているように汗ばんだり、乾燥で喉が痛くなったりしがちです。室温が十分なのに寒く感じるときは、設定温度を28℃などさらに上げる前に、足元の冷え(暖かい空気は上にたまる)や乾燥を疑ってみてください。湿度については後半で説明します。
室温22℃前後に収まっていれば、設定温度が25℃でも問題はありません。数字が気になるときは、室温計を基準に0.5〜1℃ずつ下げて様子を見るのが無理のない方法です。
暖房の設定温度と室温の違い、何度から・いつからつけるか
エアコンの設定温度どおりに室温にならない理由

エアコンの設定温度どおりに室温がならないのは、エアコンが室温を測っている場所と、人が過ごしている場所の温度が違うからです。
暖かい空気は上にたまる性質があり、エアコンは多くの場合、高い位置にある室内機のセンサーで室温を判断しています。ダイキンの資料でも「一般的なエアコンは、高い位置にある室内機内部の温度センサーで室温を判断します」と説明されています。そのため、センサーのまわりが設定温度に近づくと、床付近はまだ寒くても、エアコンは運転を弱めてしまいます。
各メーカーの説明をまとめると、次のような理由でも設定温度と室温がずれます。
また、三菱電機の取扱説明書(MSZ-Rシリーズ)には「リモコンに表示される温度は室温ではなく」設定温度(または設定体感温度)だと書かれています。リモコンの数字は「目標」であって、今の室温ではない点に注意しましょう。
室温を確かめるには、ソファや椅子に座ったときの顔くらいの高さに温度計を置くのがわかりやすい方法です。参考までに、事務所などのビルを対象にした厚生労働省の建築物環境衛生管理基準では、室温を部屋の中央部の床上75〜150cmの高さで測ることになっています。
暖房は何度からつける?外気温ではなく室温で判断する
暖房を何度からつけるかは、外の気温ではなく、部屋の室温で判断するのがおすすめです。室温が18℃を下回りそうなら、我慢せずに暖房をつけましょう。
同じ外気温でも、日当たりや断熱性によって室温は大きく変わるため、外気温だけでは部屋が寒いかどうかを判断できないからです。今回調べた範囲では、「外気温が何℃になったら暖房をつける」という公的な基準は見つかりませんでした。
判断の目安になるのは、先に紹介したWHOの室温18℃です。体が冷えやすい高齢の家族や小さな子どもがいる家庭、持病のある人は、WHOが「より高い室温が必要な場合がある」としていることを踏まえ、18℃を待たずに早めに暖房を使ってください。反対に、日中に日差しで室温が20℃前後あるなら、無理につける必要はありません。
「外が寒いから」ではなく「室温計が18〜20℃を切ったら」をスイッチを入れる合図にすると、つけ忘れによる寒さも、つけすぎによる無駄も防げます。
暖房はいつから?時期は決まっていないので室温を見て始める
暖房をいつから使うかについて、国が決めた時期はありません。何月からと決めず、室温が下がってきたら使い始めて大丈夫です。
冬の寒さは地域や年によって違い、公的な資料で示されている「暖房期間」も、省エネ効果や電気代を計算するための条件として使われているものだからです。
たとえば、資源エネルギー庁の省エネポータルサイトは、省エネ効果の計算に暖房期間「10月28日〜4月14日(169日)」を使っています。エアコンのカタログに載っている期間消費電力量(JIS C 9612)は、東京をモデルに暖房期間を「11月8日〜4月16日」、暖房時の設定温度を20℃として計算されています(日立の仕様表より)。環境省のウォームビズは、令和元年度には11月1日〜3月31日を実施期間としていました。
これらはいずれも計算や取り組みのための期間で、「この日から暖房をつけるべき」という基準ではありません。参考までに、こうした計算では10月下旬〜11月上旬ごろから暖房を使う前提になっている、と知っておけば十分です。
健康・睡眠・湿度・省エネから考える暖房の設定温度
高齢者・乳幼児がいる家庭は寒さとヒートショックに注意
高齢者や乳幼児がいる家庭では、省エネよりも寒さ対策を優先し、部屋ごとの温度差も小さくしておくことが大切です。
寒さや急な温度差は血圧を大きく変動させ、体に負担をかけるおそれがあるからです。
政府広報オンライン(取材協力:消費者庁)は、暖房のきいた部屋から冷え込んだ脱衣所や浴室へ移ると血圧が一気に上がり、その後お湯で温まると下がる、という急な変化が入浴中の事故の原因の一つと考えられると説明しています。いわゆる「ヒートショック」で、特に65歳以上の高齢者は注意が必要です。消費者庁は、入浴前に脱衣所や浴室を暖めること、部屋の間の温度差などを温度計で「見える化」することを勧めています。
乳児については、こども家庭庁が、掛け布団は顔にかかると窒息のリスクがあるため、1歳になるまでは掛け布団を使わず、スリーパーなどの着るものや空調で寒さを調整すると安心だとしています。なお、乳幼児に適した室温を数値で示した国の資料は、今回見つけられませんでした。
体調や持病によって適した環境は変わるため、心配なときはかかりつけの医師にも相談してください。
寝るときの暖房の設定温度は?寝室は室温15〜20℃前後が目安
寝るときの暖房は、日中より低めにして、寝室の室温を15〜20℃前後に保つのが目安です。
布団の中は体温で暖まるため、部屋は起きているときほど暖かくなくてよい一方、冷えすぎると眠りの質が下がったり、起きたときの温度差で体に負担がかかったりするからです。
メーカーが紹介している目安は、次のとおりです。
このように、就寝中に暖房をつけたままにするか、途中で切るかはメーカーによって案内が分かれます。当サイトでは、より安全な使い方として、就寝中も18〜20℃程度の低めの設定でつけたままにし、室温が下がりすぎないようにする使い方をおすすめします。特に高齢の家族や、夜中にトイレで起きることが多い人は、寒い部屋への移動による温度差を避けられます。途中で切る場合は、起床前にタイマーで暖房が入るようにし、朝の室温が16℃を下回らないようにしてください。
布団の中を暖めたいときは電気毛布も便利です。就寝中の使い方は電気毛布の正しい使い方で詳しく解説しています。
暖房と湿度の関係:湿度40〜60%で体感温度が上がる

暖房の設定温度を上げなくても、湿度を40〜60%に保つと暖かく感じやすくなります。
湿度が低いと肌から水分が蒸発しやすく、そのときに体の熱が奪われて、同じ室温でも寒く感じるからです。冬の空気はもともと乾燥しがちで、エアコン暖房を使うとさらに湿度が下がります。
パナソニックは「加湿をすることで、設定温度を下げたとしても、体感温度を上げることができます」と説明し、ダイキンの「空気の学校」も、湿度が低いときに湿度を上げれば、設定温度を上げたときと同じくらいの暖かさを感じられるとしています。目安の湿度は、日立が40〜60%程度、パナソニックのUP LIFEも40〜60%の範囲を挙げています。
なお、「湿度40〜70%」という数値を見かけることがありますが、これは厚生労働省の建築物環境衛生管理基準(建築物衛生法)の値で、事務所や店舗などの一定規模以上のビル(特定建築物)の空気環境の基準です。同じ基準で室温は18〜28℃とされていますが、一般の住宅に向けた数値ではなく、同省のページでも外気を取り入れる機能のない家庭用ルームエアコンは対象の設備に当たらないと説明されています。家庭では、メーカーが勧める40〜60%を目安にするとよいでしょう。
ただし、加湿しすぎると窓などに結露が出て、カビやダニが増える原因になります。湿度計で確かめながら、加湿器や部屋干しで40〜60%に整えるのが、設定温度を上げすぎずに暖かく過ごすコツです。
暖房の設定温度を1℃下げるとどれくらい節約になる?
エアコン暖房の設定温度を1℃下げると、年間で約1,650円の節約になるという試算があります。
資源エネルギー庁の省エネポータルサイトによると、外気温6℃のときにエアコン(2.2kW)の暖房設定温度を21℃から20℃にした場合(1日9時間使用)、年間で約53.08kWh、約1,650円の節約になります。ダイキンの「空気の学校」も、暖房の設定温度を1℃下げると約10%節電できるとしています。
設定温度を下げる分は、環境省がウォームビズで勧めている「首・手首・足首」を温める服装の工夫や、先に紹介した加湿で補うと、寒さを我慢せずに済みます。ホットカーペットなどで足元を温めながらエアコンの設定温度を控えめにする方法は、ホットカーペットの電気代の記事で紹介しています。
ただし、節約のために室温が18℃を下回るほど下げるのはおすすめできません。省エネは「暑すぎる分を削る」ことから始め、健康を損なわない範囲で行いましょう。
暖房の設定温度についてよくある質問
暖房を30℃に設定しても暖かくない・寒いのはなぜ?
運転を始めた直後や霜取り運転中は、温風が出ないことがあります。日立によると、暖房開始直後の予熱運転は2〜3分、外気温が低いときなどに室外機の霜を溶かす霜取り運転は5〜22分かかり、その間は暖かい風が出ません。それ以外では、フィルターの汚れ、室内機・室外機の吹き出し口や吸い込み口をふさぐ物、風量が「静」「弱」になっていないかを確かめましょう(三菱電機)。三菱電機は、確認しても暖まらないときは設定温度を31℃にして暖かい風が出るかを試し、出なければ故障が考えられるので販売店などに相談するよう案内しています。設定できる上限は機種によって違い、たとえばダイキンのEシリーズは30℃、三菱電機のMSZ-Rシリーズは31℃です(各取扱説明書)。
早く暖めたいときは設定温度を高くしたほうがいい?
早く暖めたいときは、設定温度を大きく上げるより、風量を「自動」や「強」にするのがメーカーの案内です(三菱電機)。日立も、暖まりにくいときは設定温度を上げ、風速を「自動」にするよう案内しています。設定温度を上げた場合は、部屋が暖まったら室温を見ながら目安の温度に戻しましょう。ダイキンは、エアコンの入・切を頻繁に繰り返すとかえって電力を多く使うことがあるので、なるべく自動調節に任せるよう勧めています。
ホットカーペットや床暖房と併用するときの設定温度は?
足元を温める暖房と併用するときは、エアコンの設定温度を控えめにして大丈夫です。資源エネルギー庁の省エネポータルサイトは、床暖房は足元から体を温めるので、室温を低く設定しても快適に過ごせるとしています。ダイキンも、床暖房の床が温まったらエアコンの設定温度を下げるか、スイッチを切るとよいとしています。ただし、部屋全体の室温が18℃を下回らないようにしましょう。
暖房の設定温度は18℃でも大丈夫?
設定温度が18℃でも、室温計で18℃以上を保てていて、寒さを感じないなら問題はありません。WHOは寒い季節の室温として18℃を示していますが、これは「下回らないようにしたい」下限の目安です。設定温度18℃では室温がそれより低くなる部屋も多いので、必ず室温を確かめ、高齢の家族や子どもがいる場合は20℃前後を目安にしてください。
まとめ:暖房の設定温度は「室温20℃」を目安に、18℃は下回らない
暖房の設定温度は、環境省が呼びかける「室温20℃」を目安に、温度計で室温を確かめながら決めるのがおすすめです。20℃は設定温度ではなく室温のことで、エアコンの設定温度どおりに室温がなるとは限りません。実際には22〜25℃に設定している人が多く、設定温度の数字より室温を基準にすることが大切です。
健康面では、WHOが示す室温18℃を下回らないようにし、高齢者や乳幼児がいる家庭では早めの暖房と部屋ごとの温度差に注意しましょう。暖房を何度から・いつからつけるかに公的な基準はないので、室温が18〜20℃を切ってきたら使い始めれば十分です。
寝るときは寝室の室温15〜20℃前後を目安に、低めの設定でつけておくと安心です。湿度を40〜60%に保てば設定温度を上げなくても暖かく感じやすく、設定温度を1℃下げる節約にもつながります。

