iPhoneなどのスマホやPC、モバイルバッテリー…私たちの生活は、リチウム電池なしでは考えられません。
しかし、便利な一方で、使い方を間違えると危険な場合があることをご存じですか?
特に注意したいのが「過充電」と「過放電」です。
これらの状態は、電池の寿命を縮めるだけでなく、最悪の場合、発火や爆発につながる可能性も。
この記事では、リチウム電池の過充電・過放電について、その仕組みから対策まで詳しく解説します。
過充電、過放電ってどういうこと?その現象と電池の仕組み
リチウム電池の基本:仕組みと種類
リチウム電池は、リチウムイオンが電極間を移動することで充放電を行う電池です。
正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで電気を蓄えたり放出したりします。
代表的な種類としては、スマホやノートPCなどに使われる「リチウムイオン電池」や、薄型で軽量な「リチウムポリマー電池」などがあります。」
過充電とは?仕組みとリスク
「過充電とは、電池が満充電になったにもかかわらず、さらに充電を続けることです。
過充電状態になると、電池内部の電解液が分解され、ガスが発生したり、内部の構造が壊れたりする可能性があります。
これにより、電池が発熱したり、最悪の場合、発火や爆発につながることも。また、過充電は電池の劣化を早める原因にもなります。」
近年のスマートフォンやモバイルバッテリー、PCの多くは、過充電を防ぐための制御機能を搭載しています。
充電制御機能の仕組み
- 充電ICによる制御:
- スマートフォンやモバイルバッテリーには、充電を制御するための専用のICチップが搭載されています。
- このICチップが、電池の電圧や温度を監視し、充電電流を適切に制御することで、過充電を防ぎます。
- ソフトウェアによる制御:
- スマートフォンなどのOSには、バッテリーの充電を最適化するためのソフトウェアが組み込まれています。
- 例えば、夜間に充電する場合、80%まで充電を一時停止し、起床前に満充電にするような機能や、バッテリーの劣化を抑制するために充電速度を調整する機能などがあります。
しかし、完璧に安全に充電を制御できるものではありません。
充電制御機能の限界
上記のように過充電のリスクはゼロではない
充電制御機能が搭載されているからといって、過充電のリスクが完全にゼロになるわけではありません。
そのため、以下の点に注意することが重要です。
過放電とは?仕組みとリスク
過放電とは、電池残量がほとんどない状態でさらに放電を続けることです。
過放電状態になると、電池内部の電圧が著しく低下し、電池の劣化を招きます。
また、過放電を繰り返すと、二度と充電できなくなる場合もあります。
こちらもスマホやモバイルバッテリーの制御によりトラブルを抑制されています。
過放電の制御について
- 保護回路による制御:
- リチウムイオン電池パックには、通常、過放電を防止するための保護回路が組み込まれています。
- この回路は、電池の電圧を監視し、電圧が一定のレベル以下に低下すると、放電を停止させます。
- 機器側の制御:
- スマートフォンやノートPCなどの機器側でも、バッテリー残量を監視し、残量が少なくなると自動的に電源をオフにするなどの制御が行われています。
ただし、これらの制御も万全ではなく、以下のような場合には過放電が起こり得ます。
過放電を繰り返すと充電できなくなる理由
そもそも、過放電を繰り返すとなぜ充電できできなくなるのでしょうか?

そもそも、過放電を繰り返すとなぜ充電できできなくなるのでしょうか?
過放電を繰り返すと、リチウムイオン電池の内部で以下のような変化が起こり、充電できなくなることがあります。
- 負極の銅箔の溶解:
- 過放電状態が長く続くと、負極に使われている銅箔が電解液に溶け出すことがあります。
- これにより、電池の内部抵抗が増加し、充電できなくなります。
- 電解液の劣化:
- 過放電によって電解液が分解され、ガスが発生したり、性能が低下したりすることがあります。
- これにより、リチウムイオンの移動が妨げられ、充電できなくなります。
- 結晶構造の破壊:
- 過放電により電極の結晶構造が破壊され、リチウムイオンの出し入れが不可能になる場合があります。
特に、過放電状態のまま長期間放置すると、これらの劣化が進行し、回復が困難になることがあります。
なぜ過充電・過放電は起こる?そのきっかけ
過充電や過放電は、さまざまな原因で起こります。
例えば、充電器やケーブルの不具合、高温下での充電、経年劣化などが挙げられます。
また、充電したまま長時間放置したり、電池残量が少ない状態で長時間放置したりすることも、過充電や過放電につながる可能性があります。
正しい充電方法と管理が重要になってきます。
過充電・過放電はどれくらいが目安?
リチウムイオン電池の安全な使用範囲は、電圧と充電量(%)の両方で考える必要があります。
電圧による安全域
充電量(%)による安全域
過充電・過放電を防止するには?発生した場合の対処は?
過充電・過放電を防ぐための対策
過充電や過放電を防ぐためには、以下の対策が有効です。
過充電を防止する設定
近年のスマートフォン、ノートPC、モバイルバッテリーなどの機器には、過充電を防止するための充電制御機能が搭載されています。
電池の電圧や温度を監視し、満充電に近づくと充電電流を自動的に減少させたり、充電を停止したりします。
ユーザーが特に設定を行わなくても、過充電のリスクを低減することができます。
一部のスマートフォンでは、バッテリーの充電上限を80%などに設定できる機能が搭載されている場合があります。
iPhoneの過充電を防止する
iPhoneのバッテリー充電を最適化する機能で、バッテリー残量が80%になるまでは通常充電し、それ以降はトリクル充電を行うことでバッテリーへの負荷を軽減します。
自分で設定するには、「設定」アプリを開き、「バッテリー」→「バッテリーの状態と充電」で「バッテリー充電の最適化」をオンにします。
iPhone 15以降で利用可能で、充電上限を80%から100%まで設定できます。iOS 18では、さらに85%、90%、95%の選択肢が追加されました。
「設定」アプリを開き、「バッテリー」→「充電」で充電上限を選択します。
もしも過充電・過放電してしまったら?直し方はある?
万が一、過充電や過放電によって電池が発熱したり、異臭がしたりした場合は、すぐに充電を中止し、安全な場所に移動させてください。
電池が冷えるまで待ち、その後、専門業者に相談することをおすすめします。
リチウムイオン電池の過放電復活方法
リチウムイオン電池の過放電(0に近い状態)からの復活は、状態によって可能かどうか、またその方法も異なります。安全性を考慮し、以下の情報を参考にしてください。
注意点:危険を伴う可能性
- リチウムイオン電池は、取り扱いを誤ると発熱、発火、爆発の危険性があります。
- 復活作業を行う際は、自己責任で慎重に行ってください。
- 少しでも異常を感じたら、直ちに作業を中止し、専門業者に相談してください。
復活方法
通常充電を試す
- まずは、通常の充電器で充電を試みてください。(発熱や膨張、発煙があれば即時中止してください。)
- 保護回路が働いている場合、充電器を接続することで回路がリセットされ、充電が開始されることがあります。
充電を試しても反応がない場合は、次の方法をが考えられます。
ただし、専用の機器が必要になりますので、自分では行わず、必ず「専門業者に依頼するか」「買い替えを検討する」してください。
低電流充電
過放電状態の電池は、内部抵抗が高くなっているため、通常の充電電流では充電できない場合があります。
低電流(例:0.1C以下)でゆっくりと充電することで、充電が開始されることがあります。
専用の低電流充電器を使用するか、充電電流を調整できる充電器を使用が必要になります。
パルス充電
パルス充電とは、間欠的に充電電流を流す充電方法です。
パルス充電によって、電池内部の電極を活性化させ、充電を回復させる効果が期待できます。
まとめ:リチウム電池と正しく付き合い、安全・快適な毎日を
リチウム電池の基本的な仕組みや種類、過充電・過放電がもたらすリスク、そしてそれぞれの現象を防ぐための充電制御機能や保護回路の役割について詳しく解説しました。
信頼性の高い充電器やケーブルの使用、適切な温度管理、そして定期的な点検が、電池の安全な利用と長寿命化につながります。
正しい知識と対策をもって、安心してリチウム電池を活用していくことが、快適なデジタルライフの鍵となります。