車中泊の楽しみといえば、プライベートな空間で食べる食事。
しかし、狭い車内でガスコンロを使うことに対して、こんな不安を持っていませんか?
「一酸化炭素中毒が怖いから、窓を閉め切れない」 「寝具に引火して火事になったらどうしよう」 「換気扇を回しても、結露で車内がビショビショになる」
そんな悩みを解決するのが、ポータブル電源を活用した「電気調理」です。
今回は、火を使わない安全性と、限られた電力でもしっかり調理できる実用性を兼ね備えた、車中泊におすすめの電気調理器具をご紹介します。
1. なぜ車中泊には「電気調理」が良いのか?
キャンプ=焚き火やガスバーナーというイメージがありますが、車中泊においては「電気」こそが最強の選択肢です。
その理由は大きく3つあります。
安全性が圧倒的に高い
最大にして最高のメリットです。電気調理なら一酸化炭素が発生しません。
雨の日や真冬、窓を完全に閉め切った車内でも、酸欠や中毒を気にせず温かい料理を作ることができます。
また、火が出ないので、狭い車内でカーテンや寝袋に引火するリスクもほぼゼロになります。
結露を抑えられる
ガス(プロパン・ブタン)を燃焼させると、化学反応で大量の「水蒸気」が発生することをご存知ですか?
車内でガスコンロを使うと窓ガラスが結露ですぐに曇りますが、電気調理器具(ヒーター加熱)なら水蒸気の発生は料理から出る湯気だけ。
車内の湿気を最小限に抑えられます。
「ほったらかし調理」ができる
炊飯器や電気鍋なら、スイッチを入れて待つだけ。
火加減を見張る必要がありません。
調理中に寝床を整えたり、動画を見たりして過ごせるのは、くつろぎ重視の車中泊では大きなメリットです。
2. 失敗しない電気調理の選び方:まずは「消費電力」を確認
「家のキッチンで使っているIHヒーターやホットプレートを持っていこう」 これは、車中泊初心者が最も陥りやすい失敗です。
なぜなら、多くの家庭用調理家電は消費電力が1000W〜1400Wと非常に高く、一般的なポータブル電源(定格出力500W〜700Wクラス)では動かない、あるいはすぐにブレーカーが落ちてしまうからです。
車中泊用の調理器具を選ぶ際は、以下の基準を必ず守りましょう。
【車中泊用の調理器具 選び方の鉄則】
3. ポータブル電源で使える!車中泊向け電気調理器具ジャンル
ここからは、実際に多くの車中泊ユーザー愛用している、低ワットで便利な調理器具ジャンルを紹介します。
① トラベルクッカー(多機能電気鍋)
【目安電力:300W〜500W】 もともとは海外旅行用に作られたコンパクトな電気調理器です。
ヒーター部分と鍋がセットになっており、「煮る・焼く・茹でる・炊く」がこれ一台で完結します。
袋ラーメンがぴったり入るサイズ感のものが多く、車中泊の「神器」とも呼ばれています。
- おすすめ料理: ラーメン、鍋、レトルトの湯煎、目玉焼き
万能選手が欲しいなら「ヤザワ トラベルマルチクッカー」
車中泊ユーザーの間で「神器」と呼ばれるロングセラー商品です。
- メリット: 鍋とヒーターがセットになっており、これ一つで「ラーメン」「鍋」「炊飯」「目玉焼き」となんでもこなせます。
- 注意点: 付属のスプーンなどは簡易的なので、普段使っているカトラリーを用意するのがおすすめです。
② 小型炊飯器(0.5〜1.5合炊き)
【目安電力:200W〜300W】 お弁当箱のようなサイズ感の超小型炊飯器です。
消費電力が非常に低いため、小容量のポータブル電源でも安心して使えます。
炊きたてのご飯さえあれば、あとは缶詰やスーパーのお惣菜だけでも立派なディナーになります。
- おすすめ料理: 白米、炊き込みご飯、蒸し料理(蒸しトレイ付きの場合)
電気容量を節約したいなら「JPN タケルくん」
ポータブル電源の容量に不安がある場合や、連泊をする場合に最適です。
- メリット: DC電源(12V)は変換ロスが少ないため、AC電源を使う器具よりもバッテリーを長持ちさせられます。専用の蒸しトレイを使えば、ご飯を炊く蒸気でレトルトカレーや缶詰を同時に温められます。
- 注意点: 炊飯に特化しているため、焼肉などはできません。
手軽さと速さ重視なら「サンコー 弁当箱炊飯器」
「到着してすぐにご飯が食べたい」「洗い物を減らしたい」というニーズに特化しています。
- メリット: 圧倒的な炊飯スピード。底面全体がヒーターになっているため、レトルトパウチを敷いて温める裏技も使えます。
- 注意点: 1合炊きなので、2人以上でたくさん食べる場合には向きません。
③ 電気式ホットサンドメーカー
【目安電力:600W〜900W】 パンを焼くだけではありません。
実は「万能フライパン」として使えます。
両面から挟んで焼くため熱効率が良く、短時間で調理が可能。
肉まんを挟んで焼いたり、餃子を焼いたりするのに最適です。 ※少し消費電力が高めなので、700W以上の出力ができるポータブル電源推奨です。
料理にこだわりたいなら「ドリテック ミニチュラ」
家と同じように、フライパンや小鍋を使って料理をしたい人向けです。
- メリット: 100W刻みで火力を調整できるため、ポータブル電源の出力に合わせてコントロールできます。IH対応のホットサンドメーカーを使えば、車内で焼き料理も快適です。
- 注意点: IH対応の調理器具(鍋底の直径10〜14cm推奨)を別途用意する必要があります。
④ 折りたたみ式電気ケトル
【目安電力:500W〜800W】 シリコン製でペタンコに畳めるケトルです。
カップラーメンや朝のコーヒー用に、お湯だけ沸かしたい時に重宝します。
収納場所を取らないのが最大の魅力です。
ミヨシ (Miyoshi) | 折りたためるトラベルケトル
PC周辺機器やトラベルグッズで有名な日本のメーカー、ミヨシの定番商品です。 シリコン部を押し込むだけで、使用時の約2/3のサイズに縮みます。
カシムラ (Kashimura) | 折りたたみ式ケトル / クッカー
カー用品や海外旅行用品の大手、カシムラの製品です。 「ケトル(お湯沸かし専用)」と、ラーメンなども作れる「クッカー(調理器)」の2タイプがありますが、どちらも折りたたみ可能です。
選び方のアドバイス
車中泊用 電気調理器具 スペック比較表
| 商品名 | 消費電力 (目安) | 電源タイプ | 容量 / サイズ | 特徴・おすすめポイント |
| ヤザワ トラベルマルチクッカー | 250W (100V使用時) | AC電源 (コンセント) | 約1.3L 鍋サイズ: W15.5×H7.8cm | 【車中泊の定番】 袋ラーメンが丁度入るサイズ。煮る・焼く・炊くがこれ1つで可能。電圧切替で海外でも使用可。 |
| JPN タケルくん | 110W〜120W | DC電源 (シガーソケット) | 1.5合炊き W16×D15×H14.5cm | 【DC炊飯器の王道】 ポータブル電源のDCポートや車のシガーで使える。省エネで、炊飯と同時にレトルトの温め(蒸し)も可能。 |
| サンコー おひとりさま用 超高速弁当箱炊飯器 | 185W | AC電源 (コンセント) | 1合炊き W24×D10×H8cm | 【超時短・超省電力】 AC電源なのに驚異の低電力。0.5合なら最短14分で炊ける。器に移さずそのまま食べられる形状。 |
| ドリテック ミニチュラ (DI-218) | 100W〜800W (火力調整可) | AC電源 (コンセント) | IHヒーター W18.5×D19.5×H5.5cm | 【手持ちの鍋が使える】 超小型のIHコンロ。火力を弱(100W-400W程度)に絞れば、小型電源でも手持ちのフライパン等が使える。 |
4. 水を使わない!後片付けを楽にするテクニック
電気調理器具を揃えても、車中泊最大の課題は「洗い物ができないこと」です。
道の駅のトイレで食器を洗うのはマナー違反。
車内で完結させるための工夫が必要です。
ポータブル電源の目安表:車中泊用の調理器具で選ぶ電源!
まず重要なのは、バッテリーの容量(Wh)だけでなく、「定格出力(W)」です。
- 容量(Wh): バッテリーの「スタミナ」。どれくらい長時間使えるか。
- 定格出力(W): バッテリーの「パワー」。どの家電を動かせるか。
調理器具を使うなら、定格出力が足りないとスイッチすら入りません。
| クラス | 推奨容量 / 出力 | 使える主な調理器具 | こんな人におすすめ |
| エントリー (日帰り・1泊) | 容量:200〜400Wh 出力:200W〜400W | ● タケルくん (120W) ● サンコー炊飯器 (185W) × ケトル・鍋は厳しい | 「ご飯さえ炊ければいい」人 スマホ充電と炊飯専用。軽量で持ち運びが楽なので、軽自動車やソロ車中泊向き。 |
| スタンダード (1〜2泊) ★一番おすすめ | 容量:500〜700Wh 出力:500W〜700W | ● ヤザワ トラベル鍋 (250W) ● 折りたたみケトル (500-600W) ● 電気毛布 (50W) | 「温かい料理を作りたい」人 ラーメンや鍋が可能に。電気毛布も一晩使えるため、オールシーズン対応できる万能クラス。 |
| ハイパワー (連泊・快適) | 容量:1000Wh〜 出力:1000W〜 | ● 小型IHヒーター (800W) ● 家庭用ドライヤー ● 車載冷蔵庫 | 「家と同じように過ごしたい」人 火力を調整できるIHが使えるので、焼肉や炒め物も快適。電子レンジが動くモデルもある。 |
シチュエーション別:あなたに必要なスペックはこれ!
① 「タケルくん」でご飯 + レトルトカレーだけ温めたい
- 必要な出力: 200W以上
- おすすめ:エントリークラス(200〜300Wh)
- タケルくんは消費電力が低い(約110W)ので、小型電源でも2〜3回炊飯できます。
- モバイルバッテリーの延長のような感覚で導入できます。
② 「トラベルクッカー」でラーメン鍋や、「ケトル」でコーヒーを飲みたい
- 必要な出力: 600W以上推奨
- おすすめ:スタンダードクラス(500〜700Wh)
- 多くの折りたたみケトルやトラベル鍋は、消費電力が500W〜600W付近です。定格出力が500Wちょうどの電源だと、ギリギリ動かない(過負荷で止まる)ことがあるため、出力には少し余裕(600W〜)があるモデルを選ぶのがコツです。
③ 「IHクッキングヒーター」で本格的な料理をしたい
- 必要な出力: 1000W以上
- おすすめ:ハイパワークラス(1000Wh〜)
- ドリテックなどの小型IHでも、最大火力(800W〜1000W)を使うとバッテリーは激しく消耗します。1000Whクラスの大容量がないと、夕食を作っている途中で電池切れになる恐れがあります。
自分で計算してみよう:必要な容量(Wh)の求め方
買おうとしているポータブル電源で、その器具が何時間使えるかは、以下の簡易計算式でわかります。
(※変換ロスがあるため、容量の約80%が実際に使える量と考えます)
【計算式】
電源の容量(Wh) × 0.8 ÷ 使いたい器具の消費電力(W) = 使える時間(時間)
【例】容量700Whの電源で、250Wの「トラベルクッカー」を使う場合
700(Wh) × 0.8 ÷ 250(W) = 約2.24時間
これなら、1回の食事で30分使ったとしても、4回分(朝晩×2日分)は余裕で持つ計算になります。
最初の一台なら「500Wh / 600W」クラスが正解
迷ったら、「容量500Wh以上、定格出力600W以上」のスタンダードモデルを選んでおけば間違いありません。
ポータブル電源の王道:バランスの良い設計と世界で信頼を得ているブランド
安心のアフターサポートなら日本ブランド:しかもサイズも軽量コンパクト
安全性重視なら固体電池を採用:夏場の高温になる車内でも適用
このクラスなら、今回ご紹介した「ヤザワ」「タケルくん」「折りたたみケトル」のすべてを安心して動かすことができます。
まとめ:電気調理で車中泊を「動く自分の部屋」にしよう
火を使わない電気調理を取り入れることで、車中泊の安全性と快適性は劇的に向上します。
- 一酸化炭素中毒の心配がない
- ポータブル電源に合った「低ワット(300W〜600W)」の器具を選ぶ
- 洗い物を出さない工夫(ホイルや袋調理)をする
まずは、手持ちのポータブル電源の「定格出力」を確認することから始めましょう。
そして、最初の一つとして「トラベルクッカー」か「小型炊飯器」を手に入れてみてください。
車内で炊きたてのご飯の香りがした時、あなたの車中泊ライフは新しいステージへ進むはずです。
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