家庭内で使用済みとなるボタン電池は、体温計、時計、小型リモコンなど、私たちの生活の隅々で活躍していますが、「どこに捨てればいいか分からない」と引き出しの中に溜め込んでしまいがちな品目の一つです。
乾電池と同じように自治体のゴミに出していいのか迷う方が非常に多いのは、ボタン電池が持つ二つの大きな特性に起因します。
一つは環境リスク、もう一つは火災リスクです。
一部のボタン電池、特に酸化銀電池(SR)などには、過去に水銀が使用されていた経緯があり、環境保全の観点から適正な回収と処理が不可欠です。
さらに、絶縁されていない状態で他の金属や電池と接触するとショートが発生し、発熱、破裂、または発火に至る危険性があります。
安全な廃棄は、廃棄する個人の責任であると同時に、公共の安全を守る行為でもあります。
ボタン電池の回収ボックスはどこに?家電量販店は?
ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、ケーズデンキ、エディオンなどの主要な近隣の店舗では、小型充電式電池とともにボタン電池の回収サービスを実施しています。回収ボックスかサービスカウンターで回収してくれるます。
大手家電量販店・ホームセンターの回収サービス比較
ただし、小売店での回収サービスは非常に便利ですが、店舗や対応する電池の種類、回収の受付方法には差異があります。
店舗ごとの体制により、「回収ボックスに投入するだけ」の手軽な店舗もあれば、「サービスカウンターでスタッフに声をかける必要がある」店舗もあります。
| 店舗名 | ボタン電池回収の有無 | 回収場所/方法 | 
| ヤマダ電機 | ◯ | 回収ボックスまたはサービスカウンター | 
| ノジマ | ◯ | 対象店舗にて協力回収を案内 | 
| ビックカメラ/ヨドバシカメラ | ◯ | 回収缶/ボックス(店舗による) | 
| ケーズデンキ/エディオン | ◯ | 回収ボックス等(店舗による) | 
| ホームセンター/イオン | ◯ | 回収ボックスまたはサービスカウンター | 
多くの小売店がBAJやJBRCの協力店として、電池の回収に無償で協力しています。
これは、製品の販売者としての社会的責任に基づいています。
家電量販店・ホームセンターにおける回収ボックスの普及
大手家電量販店やホームセンターは、BAJおよびJBRCの協力店として、電池回収の最前線となっています。
設置状況の確認
回収サービスは広く提供されていますが、ホームセンターなども店舗によって回収ボックスが設置されている場所(入口付近、電池売り場、サービスカウンターなど)や、回収方法が異なります。
例えば、ヤマダ電機では回収ボックスまたはサービスカウンターでの回収が案内されていました。
そのため、店舗を訪問する前に、公式サイトや電話で回収ボックスの有無を確認するか、訪問時にスタッフに声をかけることがスムーズな利用の鍵となります。
自治体(公共施設)における回収ボックスの設置
大都市圏を中心に、自治体自身が公共の利便性向上を目的として、独自の電池回収拠点を設ける動きが広がっています。
大都市圏の事例:
- 大阪市: 区役所や市庁舎など、市民が日常的に利用する公共施設に乾電池・ボタン電池回収ボックスを設置し、商業施設へのアクセスが難しい住民にも回収ルートを提供しています。
- 神戸市: 各区の公共施設に設置されている小型家電リサイクルボックスの横に、電池類回収ボックスを設け、市民の排出機会を増やしています。
これらの公共施設における回収ボックスの設置は、電池の回収率を高める上で非常に有用な手段です。
自治体の公式ウェブサイトでは、「電池類回収ボックスマップ」が公開されている場合もあり、自宅から最も近い回収場所を簡単に特定できる利点があります。
ボタン電池の回収ボックスはどこに?検索のための「二つのルート」
一般消費者が「電池工業会」の検索システムで回収先を探そうとする際、実は回収対象とする電池の種類によって、大きく分けて二つの異なる回収システムが存在することが、混乱の原因となっています。
電池を正しく処分するためには、まずこの二つのシステムの役割を理解する必要があります。
ボタン電池(SR・LR・PR)の回収ルートと検索(BAJ)
私たちが一般的に「ボタン電池」として認識する酸化銀電池、アルカリボタン電池、空気亜鉛電池の3種類(型式記号がSR、LR、PRで始まるもの)については、一般社団法人電池工業会が運営するボタン電池回収推進センター(BAJ)が、リサイクルの主要な主体となっています。
BAJルートの目的と検索方法
BAJがこの取り組みを推進している背景には、水銀含有の懸念がある電池を、産業廃棄物処理法に基づく広域認定制度を利用して適正に管理し、水銀を安全に処理する責任が担っています。
消費者は、BAJの公式サイトにある「回収協力店検索システム」を利用して、回収協力店を探すことができます。
協力店には、家電量販店やホームセンターのほかに、時計店や補聴器販売店など、ボタン電池を日常的に扱う店舗が多数登録されています。
重要な判断基準: 
このBAJルートで回収されるのは、あくまで型式記号がSR、LR、PRのいずれかである電池に限られます。
消費者は、手持ちの電池の裏面に記載された型式記号を確認することが、正しい回収先を見つけるための最初のステップとなります。
小型充電式電池(Li-ion, Ni-MHなど)の回収ルートと検索(JBRC)
BAJと並んで「電池回収」の文脈で頻繁に登場するのが、一般社団法人JBRCが担う小型充電式電池のリサイクルです。
JBRCの回収対象は、ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など、主にモバイル機器やコードレス掃除機などに使われる充電可能な電池です。
「電池工業会」関連の検索システムを利用しようとする場合、ボタン電池(SR/LR/PR)はBAJ、充電式電池はJBRC、と対象が明確に分かれていることを理解しなければなりません。
もしボタン電池だけでなく、古くなったモバイルバッテリーや電動工具のバッテリーなども処分したい場合は、JBRCの「協力店・協力自治体検索」システムを利用することが適切です。
CR・BR系ボタン電池の特異性:特殊な電池の回収対応と例外ルール
一般のボタン電池(SR, LR, PR)は協力店ルートが中心ですが、ボタン電池の形状をしていても、その化学組成によって回収ルートが全く異なる「例外」が存在します。
この違いを理解することが、適切な廃棄経路を確定するための最も重要なポイントです。
リチウムコイン電池(CR・BR)の例外ルール
消費者が電池の分別で最も混乱するのが、ボタン電池と同じ形状をしているリチウムコイン電池(型式記号がCRまたはBRで始まるもの)です。
化学組成に基づく分別:
CRやBRの電池は、水銀を含んでいないため、水銀処理を目的とするBAJの回収対象外と明確に定められています。
リサイクルシステムは、消費者の認知しやすい「形状」ではなく、「化学組成」と「有害物質の有無」に基づいて設計されています。
このため、CR・BRのリチウムコイン電池は、産業廃棄物ルート(BAJ)ではなく、多くの場合、一般廃棄物ルート(自治体のゴミ収集など)に戻されます。
リチウムコイン電池の処分ルート例
多くの自治体では、CR・BR電池を絶縁処理した上で、「不燃ごみ」または「有害ごみ」として収集日に出すよう指定されています。
地域ごとの乾電池との分別ルール
地域によって、一般の乾電池と特殊電池の分別ルールが大きく異なります。
- 札幌市の事例: 札幌市では、単1から単5の筒型乾電池は資源物として収集されますが、充電式電池、ボタン電池、コイン電池は筒型乾電池の収集対象ではないと明確に区別されており、市民に対してこれらの特殊電池を協力店や指定ルートで処分するよう強く促しています。
このように、自治体が定めるルールが最終的な判断基準となります。
SR/LR/PR電池についても、協力店が近くにない場合は、自治体の公式ウェブサイトを確認し、公共施設での回収や、自治体独自の分別ルールがないかを調べる必要があります。
ボタン電池・コイン電池の種類と適切な処分ルート
| 電池の種類(型式記号) | 一般的な名称 | 水銀含有の可能性 | 推奨される回収ルート | 主な回収団体/最終処分 | 
| SR | 酸化銀電池 | 高 (過去製品) | BAJ協力店(家電量販店、時計店など) | BAJ (ボタン電池回収推進センター) | 
| LR | アルカリボタン電池 | 低/無 | BAJ協力店(家電量販店、時計店など) | BAJ (ボタン電池回収推進センター) | 
| PR | 空気亜鉛電池 | 低/無 | BAJ協力店(補聴器販売店など) | BAJ (ボタン電池回収推進センター) | 
| CR, BR | リチウムコイン電池 | 無 | 自治体のルールに従う(絶縁後、不燃ごみが多い) | 自治体 | 
| Ni-Cd, Ni-MH, Li-ion | 小型充電式電池 | 無 | JBRC協力店(家電量販店、ホームセンターなど) | JBRC (小型充電式電池リサイクル) | 
ボタン電池の回収ボックスへ安全に持ち込むための注意点
回収場所を見つけたら、次に重要になるのが「安全な準備」です。
電池を適切に絶縁せずに廃棄することは、火災の原因となり、リサイクルプロセス全体に危険を及ぼします。
【必須】通電による発熱を防ぐ「絶縁処理」の徹底
電池を回収ボックスやサービスカウンターに持参する前に、必ず電極(+極と-極)を完全に覆うようにテープを貼って絶縁しなければなりません。

絶縁が必要な理由
電池の電極同士が接触したり、他の金属や電池と接触したりすることでショートが発生し、残存する電気が流れ続けて発熱し、最終的に破裂・発火するリスクがあります。
特に、回収された電池は一つの容器にまとめられて運ばれるため、このショートリスクは非常に高いです。
絶縁処理は、火災・爆発を未然に防ぐための最も重要な安全策であり、これを怠ると、収集車両や処理施設での火災事故につながる可能性があるため、廃棄する消費者が徹底すべき公共安全上の責任といえます。
推奨されるテープ:
セロハンテープでの絶縁も可能ですが、剥がれにくく粘着力が強いビニールテープの使用がより推奨されます。
回収ボックス利用時の投入制限と対象外電池
協力店が設置している回収システムは、あくまで正常に使用を終えた電池を安全に回収するためのものです。
特定の状態にある電池は、危険性が高いため、回収ボックスでは受け付けられません。
- 投入口のサイズ制限: ボタン電池回収缶の投入口は、対象となるボタン形電池のみが入るように設計されています。投入口に入らない大型の電池や、その他の小型充電式電池パックは対象外です。
- 破損・液漏れ・膨張した電池: 液漏れしたり、外装が破損したり、膨張したりした電池(特にリチウムイオン電池)は、内部で異常な化学反応が進行している可能性があり、発熱・発火のリスクが極めて高いため、協力店では回収できません。
- 対処法: これらの危険な状態にある電池は、絶対に回収ボックスに入れず、自治体の清掃担当部署に相談し、専門の危険物廃棄ルートに従って処理してもらう必要があります。
ボタン電池の回収場所に関するよくある質問
- Q「近くの回収ボックス・協力店が分かりません。どこを探せば良いですか?」
- A回収先を特定するためには、まず手元にある電池の型式記号(SR/LR/PRかCR/BRか)を特定することが出発点です。 - SR/LR/PRの場合: BAJの公式サイトにある「協力店検索システム」を利用して、家電量販店、時計店、補聴器販売店など、自宅から近い協力店を探します。
- CR/BRの場合、または BAJ協力店が見つからない場合: お住まいの自治体の公式サイトを確認します。自治体が公共施設(市役所、区役所、公民館など)に独自の電池類回収ボックスを設置している場合があります。
 
- Q「協力店が近くにない場合の処分方法はありますか?」
- A協力店ルートが利用できない場合、最終的な処分は自治体のルールに従います。特にリチウムコイン電池(CR/BR)については、絶縁の上で「不燃ごみ」として自治体の収集日に出すよう指定している地域が多いです。 また、乾電池とは別の収集日に「透明な袋に入れて出す」といった、地域ごとの特別ルールが存在する可能性があるため、必ずお住まいの自治体の「電池類」または「有害ごみ」の排出方法を確認することが不可欠です。 
- Q「家電の買い替え時でないと回収してもらえませんか?」
- Aボタン電池や小型充電式電池の回収は、多くの場合、製品の購入や買い替えを条件としていません。BAJやJBRCのリサイクル制度は、製品の販売に関係なく適正な回収を目指しています。 ただし、一部の小売店や特定のキャンペーンでは条件が付く場合もあります。そのため、念のため、店頭で「ボタン電池の回収だけをお願いできますか?」と事前に確認することをお勧めします。 
まとめ:ボタン電池の回収ボックスはどこに?近隣店舗にある
使用済みボタン電池の回収は、環境保護と火災防止という二つの側面から、非常に重要です。
溜め込んでいたボタン電池を安全に処分するためには、以下の3つのステップを必ず実行してください。
- 【電池の型式確認】 電池裏面の型式記号を確認し、SR/LR/PR(BAJルート)か、CR/BR(自治体ルート)かを判断する。この化学組成に基づく分別こそが、正しいリサイクルルートを見つける鍵となります。
- 【絶縁処理の徹底】 廃棄する全ての電池の電極(+極と-極)に、ビニールテープやセロハンテープをしっかりと貼り、ショートによる発熱・発火を完全に防ぐ。破損・液漏れした電池は絶対に持ち込まない。
- 【回収先の特定】 BAJの検索システム、または自治体の公式ウェブサイトを確認し、最も利用しやすい回収協力店や公共施設のボックス設置場所を特定する。

 
  
  
  
  