ワイヤレス充電は、名前の通り、ケーブルを使用せずにデバイスを充電できる技術です。
スマートフォンをはじめとするモバイル機器では、ワイヤレス充電Qiが急速に普及しており、利便性が増しています。
本記事では、ワイヤレス充電Qiやそれ以外の規格の仕組みや「体に悪いの?」と言った不安にわかりやすく説明します。
ワイヤレス充電のQiとは?仕組みをわかりやすく解説
「ワイヤレス充電」という言葉はよく聞くけど、一体どういう仕組みなの?
ここでは、その基本原理を小学生でもわかるくらい簡単に解説します。
ワイヤレス充電のQiの基本:電磁誘導の力を利用
現在主流となっているワイヤレス充電規格「Qi」。
「Qi」の 読み方は、(チー)と呼ばれるのが一般的です。
これは、「電磁誘導」という物理現象を利用しています。
- 充電器とスマホにコイルを内蔵:
充電器とスマホには、それぞれ電気を通すための「コイル」が入っています。 - 充電器のコイルに電流を流す:
充電器のコイルに電流を流すと、磁力が発生します。 - 磁力がスマホのコイルに電流を生み出す:
発生した磁力がスマホのコイルに伝わると、自動的にスマホ側にも電流が流れる仕組みです。
「電磁誘導」って何だっけ?
ワイヤレス充電のキーワードとなる「電磁誘導」。
この言葉、なんだか難しそうに聞こえますが、実は理科の授業で実験したことのある身近な現象です。
磁石をコイルの中に入れると、電気が流れて検流計の針が動いた、という実験を覚えていませんか?
この現象こそが「電磁誘導」です。
- コイル:電線をぐるぐる巻きにしたもの。
- 磁界:磁石の周りにできる、目には見えない磁気の力のこと。
この「電磁誘導」を簡単に説明すると、「磁界の変化が、電気(電流)を生み出す」という現象です。
ワイヤレス充電器とスマートフォンは、この原理をフル活用しています。
ワイヤレス充電規格「Qi」は、「Wireless Power Consortium(ワイヤレスパワーコンソーシアム)」という国際的な業界団体によって、国際的な標準規格を策定・普及させることを目的に管理されています。
WPCは、「Wireless Power Consortium」の略称です。
2023年1月には、WPCはAppleと協力し、MagSafeの技術を積極的に取り入れたQi2を発表した。
ワイヤレス充電は体に悪いの?
ワイヤレス充電は、国際的な安全基準(ICNIRP:国際非電離放射線防護委員会など)を満たすように設計されており、安心して使用できます。
ICNIRP 高周波電磁波100 kHz – 300 GHzの関連ページ
ワイヤレス充電で発生する電磁波は、国際的な安全基準を満たしており、健康に悪影響を及ぼすという科学的根拠はありません。
Qi充電で発生する電磁波は、主に「磁界」です。
磁界には、距離が離れると急激に弱くなるという性質があります。
Qi充電器は、スマートフォンと密着した状態で使用するため、人体に影響を与えるような強い磁界はほとんど発生しないと言われます。
また、充電器はスマホを検知したときだけ磁界を発生させるため、不必要な電磁波の放出も抑えられています。
私たちが普段使っているIHクッキングヒーターや電子レンジなどと比べても、その出力ははるかに小さいものです。
ワイヤレス充電は「Qi」だけじゃない?「Qi」”以外”のワイヤレス充電の規格
実は、「Qi」以外にもワイヤレス充電の規格は存在します。
Qiに比べてあまり一般的ではありませんが、いくつか紹介します。(スマホ充電には使われていない。)
規格 | 制定団体 | 最大出力 | 主な対応メーカー |
---|---|---|---|
Qi | Wireless Power Consortium (WPC) | 最大15W(Qi2では15W対応) | Apple、Samsung、Googleなど |
AirFuel | AirFuel Alliance(旧 A4WP) | 主に共振型で数W~ | 一部産業向け、自動車分野など |
PMA | Power Matters Alliance | 主にインダクティブ | 過去に独自展開があったが、統合後はAirFuelへ統合 |
Qi規格はモバイル機器向けワイヤレス充電の事実上の標準となっており、製品シェアは80%以上とされています。
電力伝送方式については、Qiが採用する電磁誘導方式以外に以下のような方式があります。
- 電界結合方式
この方式は、磁気ではなく「電界」を利用して電力を伝送します。充電器とデバイスにそれぞれ電極板を設け、一方の電極板から発生させた電界を、もう一方の電極板が受け取ることで電気が流れる仕組みです。Qiに比べて電力伝送距離が非常に短く、電極板同士がほぼ接触している必要があります。そのため、スマホのような一般的なコンシューマ機器向けには普及していません。主に、ICカードや小さなセンサーなど、より安定した電力供給が必要な機器への応用が考えられています。 - 電波受電方式(RF給電方式)
「電波で充電する」と聞くとSF映画のようですが、この技術は実用化が進んでいます。充電器から発信された特定の周波数の電波を、受電デバイスがキャッチし、その電波エネルギーを電気に変換して充電を行います。 電波による電力伝送は効率が悪く、伝送できる電力が非常に小さい点が課題です。 そのため、現状ではスマートフォンなどの大容量バッテリーの充電には向いておらず、主にIoTセンサーやスマートタグ、補聴器など、消費電力がごくわずかな機器の充電に使われています。
これらに関しても、どちらも身体への影響は、内容に設計されています。
電界結合方式は、磁界と同様に非常に近距離でしか機能しません。
電波受電方式は、電波ですがWi-FiやBluetooth、携帯電話の通信で使われる電波と同じ「非電離放射線」です。非電離放射線は、DNAを損傷させるほどのエネルギーを持たないため、安全とされています。
QiとQi2は何が違うの?
現在の主流である「Qi(チー)」と、最新規格「Qi2(チーツー)」。
この2つの大きな違いは「磁力」です。
- Qi:位置が少しでもずれると充電効率が低下することがあります。
- Qi2:Appleの「MagSafe(マグセーフ)」技術をベースにしており、磁力でピタッと位置合わせができるため、より安定した充電が可能になります。
比較項目 | Qi(チー) | Qi2(チーツー) |
---|---|---|
充電の仕組み | 電磁誘導 | MPR(Magnetic Power Profile)を利用した電磁誘導 |
位置合わせ | 手動で位置を合わせる | 磁力で充電器とスマホが吸着 |
充電の安定性 | 位置が少しずれると充電効率が低下する | 磁力で常に最適な位置が維持されるため、効率が安定 |
最大出力 | 基本的に5W・7.5W・15Wなど | 従来のQiに加えて、最大15Wの安定した充電に対応 |
対応デバイス | Qi対応のスマートフォン全般 | Qi2対応のスマートフォンやアクセサリー(主にiPhone 15以降) |
周波数帯 | 100~205kHz | 360kHz |
主なメリット | 幅広い機器に対応、最も普及している | 充電効率が高い、安定した15W充電が可能 |
Qi2対応の充電器であれば、Qiに対応したスマホなどのでデバイスに対応できます。
ワイヤレス充電を利用時のポイントをわかりやすく解説
ワイヤレス充電でスマホが熱くなるのはなぜ?
充電中にスマホが熱くなるのは、「エネルギー変換のロス」が原因です。
ワイヤレス充電では、電気を磁力に変換し、再び電気に戻す過程で、一部が熱エネルギーとして放出されます。
この熱は、充電器やスマホの充電効率によって異なります。
ワイヤレス充電中の発熱は、ある程度は避けられない自然な現象です。
しかし、熱くなりすぎると、スマートフォンのバッテリー寿命に悪影響を与えたり、場合によっては充電が停止したりすることがあります。
温度の目安(体感の目安):何度ぐらいからが「異常」?
異常な発熱が起こる原因
正常な発熱を超えて高温になる場合は、以下のような原因が考えられます。
これらの原因に心当たりがないのに毎回高温になる場合は、充電器やスマホの故障、あるいは内部バッテリーの劣化が考えられます。その場合は、使用を中止してメーカーに相談することをお勧めします。
ワイヤレス充電が遅いと感じたら?
充電速度が遅いと感じる場合も上記と同様です。以下の点を確認してみましょう。
また、充電器が15W対応でも、充電される側の機種によっては、それより少ないワット数での充電になり、充電の早い機器種との違いを感じる事があります。
対応ワット数 | 代表的なモデル | 備考 |
---|---|---|
最大5W | Qi対応のワイヤレスイヤホンケース、スマートウォッチなど、多くの小型デバイスがこの5Wでの充電に対応しています。 | |
最大7.5W | iPhone 8〜14シリーズ | MagSafe非搭載の一般的なQi充電器使用時。多くのQi対応ワイヤレスイヤホンもこの範囲。 |
最大10W | 多くのAndroidスマホ | Samsung GalaxyやGoogle Pixelの一部モデルなど。 |
最大15W | iPhone 12〜15シリーズ Samsung Galaxy S/Zシリーズ Xperia Pixel | iPhone:MagSafeまたはQi2対応充電器使用時。 Android:多くの最新機種が対応。 |
20W以上 | Google Pixel 6 Pro以降 Xiaomi、Huaweiの一部モデル | 各メーカー独自の急速ワイヤレス充電に対応した専用充電器が必要。 |
ワイヤレス充電のやり方
ワイヤレス充電を始めるのに特別な設定は必要ありません。
- Qi対応のスマホと充電器を用意
- 充電器の給電を開始
- 充電器の上にスマホを置く
これだけで充電が始まります。
正しい位置に置くことがポイントです。
ワイヤレス充電Qiに対応した充電器
シンプルだけど保護機能もしっかり搭載されている日本ブランド
新しいQi2対応なら
モバイルバッテリー内蔵でどこでも持ち運びするなら
防災対策としてポータブル電源を購入するなら
ワイヤレス充電は電力効率が悪い傾向があります。直接充電できるタイプについては、以下の記事でも紹介しています。
ワイヤレス充電Qiの仕組みをわかりやすく解説!のまとめ
ワイヤレス充電は、ケーブルを使わずにデバイスを充電できる便利な技術として急速に普及しています。
これからは、スマートフォンだけでなく、さまざまなデバイスがワイヤレス充電に対応するようになり、私たちの日常生活はますますシームレスで便利なものへと変わっていくと期待されます。
今後、ワイヤレス充電技術はスマートフォンだけにとどまらず、家電製品、車載機器、ウェアラブルデバイス、さらには商業施設やオフィスに広がり、あらゆる場面で「ケーブルを使わない充電」が当たり前になるかもしれません。
ユーザーの利便性が向上するだけでなく、コネクタの摩耗やケーブルの断線といった問題も減少し、デバイスの寿命を延ばす効果も期待できます。